歯科病院での診療を終え、そのまま夕方から大学図書館へ。

ここはニューヨーク大学の中でも最大規模誇るBobst Library。歯学部のあるメディカルビル群からはシャトルバスが走っている。

アメリカの学生さんは「大学生」のプロ。

学業成績が進路や就職にダイレクトに影響するので、全員が勉強、日々課題とテストに追われている。

歯学部や医学部、ロースクール等プロフェッショナルスクールへの進学においても、学業成績は重視されるので皆必死だ。

さらに私が所属する専門医課程(レジデンシープログラム)を狙っている歯学部生は、せっかく難関の Dental schoolに入学しても全く休まらない。

少しでもGPAを上げようと猛烈に勉強していて、そういう意味ではおそらくレジデンシープログラムよりも実はシビア。

望む望まないにせよ彼らは大学と大学院の期間、大量の本や論文を読まされるので、思考力も知的体力も自然と身につく。

そして日本や韓国での詰め込み教育とよく比較されるが、アメリカの大学は「詰め込み」も十分行う。

勉強の絶対量がとにかく圧倒的なのだ。

それに比べて日本の大学生は、「受験」のプロと言える。

コツコツとした日々の努力も大切ですが、傾向と対策を考えた効率的な勉強、情報処理力と情報整理力が試される。

精神力や本番力、運などにも左右される。

最近は推薦入試も増えているし、幼稚園や小学校などの内部進学という「裏技」もある。

しかし、基本的には本当に筆記試験のみの「一発勝負」。

国立大学と私立大学、さらに大学のレベルにもよるのだろう。

ただし、基本的には面接や推薦状、課外活動のような曖昧な評価項目が重要視されることはない。

したがって、運も含めた実力、試験の結果だけで評価がされる。

そういう意味では、人生においてこれほど機会均等なイベントはそうないだろう。

就職活動のように大学名で足切りされることはない。

とりあえず勉強さえできれば、試験さえパスすればよいのだから。

一般的にアメリカの大学教育システムの方が優れていると思われがちだが、一方、日本の大学生は大学入学時点にそれなりの基礎学力を身につけている。

だから、私は多少スポーツに打ち込んで体力や精神を磨いたり、アルバイトや旅行に明け暮れ視野を広げるのもアリなのではないか、と個人的には捉えている。

むしろその方が人格形成においてバランスが取れるとさえ思う。

勉強ばかりしてきた学生は話をすればだいたいわかるような。。

こちらでも他人の成績を気にしてばかり、周りの様子を伺って生きてきたからなのか、他人の噂話や陰口が会話の中心という学生もいた。

何度か直接指摘したこともあったが、本人にとってはそれが当たり前のことで、悪気がないのがやっかい。

ガリ勉君がつまらない、勉強だけでなく、スポーツや芸術等両方できてはじめて「Cool!」というのは、万国共通。

ただし、本当に優秀な人物は唯我独尊。

突き抜けているから他人を羨む必要も比較する必要もなく、「受験競争」という概念から解放されているから「いいヒト」が多かったような。

さて、大学図書館の10階からはマンハッタンが一望できる。

エンパイアーステイトビルも見える。そして目の前にはワシントンスクエア。

30年程前は麻薬の密売人が暗躍していたそうだが、今では見る影もなく、いたって平和だ。図書館の隣にはスターンビジネススクール。

図書館の内部には2年程前にこうした柵が取り付けられた。色々なことがあったことが容易に想像つく。。

図書館では、診査の時に使用する問診票と記載事項を整理していた。

そしてオレンジ色に光輝くエンパイアステイトビル。

毎晩エンパイアステイトビルを眺めながら帰宅している。

今後留学時代の象徴として懐かしむこともあるのだろうか。。

卒業がかかっているので、気持ちは落ち着かないが、

全顎的な難症例の治療を通じ、補綴科レジデントとしての醍醐味を存分に味わっていることは間違いない。