NYの街はご覧の通り、すっかりクリスマスモードに突入。街の雰囲気も寒さも12月らしくなってきた。
今週はGNYAPに参加してきた。GNYAPというのはアメリカの東部にある歯科大学補綴科レジデンシーを終えた補綴科専門医が中心となって運営されている学会で、ヨーロッパ、特にスイスやイタリア、ドイツ、北欧諸国とのつながりが強いという特徴がある学会。
スピーカーも8割以上ヨーロッパ系が占める。彼らの臨床からは補綴科専門医だけあって、モノ作りに対するこだわりが十分伝わってくる。パネライやフランクミュラー等の時計や、メルセデスもポルシェなどの車もこういう人達が作っているなら信頼出来る、安心だと妙に納得してしまった。
学会の内容そのものは、補綴関連の最新の文献レビューをベースに、新しい材料、器械、技術の紹介が主だったところ。CAD/CAM、ジルコニアに関連した講演がほとんどで新しいネタはなかったが、その中でもハーバードのDr.Galluciが最近自身がPublishしたインプラント補綴の臨床研究の結果を報告した講演と、イタリアのDr.Coachmanのデジタル化したスマイルデザイン、審美の診断を、実際の臨床でどう行っているかを紹介した2つが我々レジデントの中では面白かったね、という話になった。
ほとんどの講演が大がかりなケースだったが、そんな臨床を我々が行える訳がない(しかも今する必要はない)のはさすがに補綴科のレジデントだけあって皆わかっていて、やはり現実的で実際の臨床に応用可能な2つの講演がみんなの興味を惹いたってことだと思う。つまり最終的には、ワックスアップによる診断も、上部構造の作製もデジタル化されていくのだろうけど、それにはまず患者さんの状態のどこをみて、何を考え、どう診断を下すのか、という思考のプロセスが前提として不可欠であって、それがないとどれだけデジタル化しても臨床には何の役にも立たないってことだ。
自分も全く同意見だった。だからワックスアップや人工歯の排列を自分の手でやってみる必要性が(ずっとやり続ける必要はないと思うが)、身に染みてわかる。文献を読まされたり実際の患者さんの診療を通じて、問題解決力(ようは診断力)を徹底的に鍛えられているっていうのも、すべてのベースがそこにあるからだ。
ところで、Dr.Coachmanの前歯部審美に関する講演は、技工士とのやりとりの具体的な方法をいかにデジタル化してスムーズに行うかという内容だったが、こうしたオペレーションが他科の専門医にも出来れば、インターディシプリナリーアプローチももっとやりやすくなるかもしれない。
先週、矯正科から新しい依頼があって、これから補綴科の立場から診断しなければならないのだが、補綴科医の果たすべき役割というのも少し分かった気がする(そんな大それたことではないが)。先天性に大臼歯が欠損していて、全部の歯が矮小で、上顎の劣成長と下顎のovergrowthをオペなしで治すというケースだ。もちろん全顎矯正で、5年くらいかかる様子だが、矯正科のレジデントと相談することになっている。
あと、Dr.Galluciのやっているインプラント補綴の生存率に関する臨床研究は、日本でのデータがあれば知りたいと思った。ご存知方がいらしたら教えて下さい。