今日は秋晴れのニューヨーク。気温も20°を超え、日本の秋を彷彿させる清々しい一日だった。

現在私が所属しているのは、ニューヨーク大学歯学部補綴科、3年間の正規のプログラム

そこで補綴科レジデンシープログラムのレジデントとして、毎日患者さんの治療にあたっている。

一言で言うと、ここは補綴専門医になるための専門大学院。

歯学部を卒業し、すでに歯科医師のライセンスを取得した者だけが進学を許される。

よくある研究留学とは異なり、日々の9割を臨床、残りが歯学部生への教育に費やされ、研究はほとんど行わない。

またニューヨーク大学には一週間程のインプラントを学ぶための短期留学コースもある。

日本の歯科クリニックのホームページでもよくみかける「ニューヨーク大学歯学部インプラント科CDEプログラム修了」と記載しているのはほとんどがこの短期留学。

そうしたコースとは一線を画す本格的なもの

分かり易く言えば、語学留学と正規の大学院留学との違いとでも言えるかもしれない。

アメリカの歯学部を卒業した歯科医だけではない。

世界中から応募してきた「腕に覚えのある」優秀な人材が選考にかけられ、約10倍以上の難関をくぐり抜け採用される。

この3年間のプログラムを修了すると「米国補綴専門医」を標榜することが許される。

その後は、補綴全般、インプラント、審美歯科の専門医として診療にあたることになる。
さて、今日は義歯の修理と右下5本ブリッジのセットのお二人だった。
義歯はクラスプが壊れてしまったので、ピックアップ印象を行い、その場でワイヤーのクラスプ(バネ)を取り付け修理。
技工士さんが毎日日替わりで来てくれ、修理の仕方もワンステップ毎に教えてくれる。
その間、隣でポルトガルから来たレジデントのジョジョがCT撮影用のステントを作成していた。

治療用義歯の咬合面に直接穴を開け、そこにX線不透過の材料を流し込み完成させる。

この方法だと義歯全体を複製する手間、歯面にバリューム等を塗り付ける手間が大幅に省略出来るので、非常に便利。ステントの変形も防げる。

ニューヨーク大学補綴科のレジデントは総勢20名。

セッション毎に多様なバックグランドを持つファカルティが常に5名程クリニックに。

それぞれ経験豊富な補綴専門医や技工士から様々な技工のテクニックが学ぶことが出来る。

ニューヨーク大学補綴科の圧倒的なアドバンテージはこのケースの多様性、豊富な臨床ケースにあると言っても過言ではない。

さらにマスターの学位(修士号)の取得が必須ではなく、修士号取得のための授業もない。

そのかわりに一年次から週に10セッション、集中的にクリニックで診療を行っている。

これほど多くのファカルティから臨床の現場で学べるクリニックは、世界中探してもそう見つからないだろう。

NYUの補綴科がある意味、「世界一」のClinical programと呼ばれる所以がここにある。